連続ブログ小説~裏切りのモアイ像~(中編)

おはようございます。カメさんです。
この物語はフィクションです。実在の人物及び団体とは一切関係ありません。







R246を猛スピードで走り抜ける一台のMAZDA3。山中での嫌な記憶を振り切るべく山崎はアクセルを踏み続けた。運転に集中する間に、次第に冷静さを取り戻した山崎は思案する。
手に入れた「伝説のモアイ像」があれば数億単位の大金が手に入る。しかし事情があったとはいえ、ハンター仲間を撃って手に入れたもの。もし万一カメさんが生きていたら再び命を狙われる可能性も考えられる。暫くすれば加藤とカメさんが死んだニュースが流れるかもしれない。ほとぼりが冷めるまでアジトに隠れて様子を見よう。ようやく山崎の中で決心がついたその時だった。


スマホの着信音が鳴り響く。着信履歴を見た後、慌てて車を路肩へと急停車させる山崎。表示された電話番号はカメさんのものであった。強張った顔つきで一呼吸した後、意を決して着信ボタンを押した。

カ 「ヤマザキか?」
山 「あの銃撃を受けて、よく生きていたなカメさん。」
カ 「…」
山 「何故加藤を殺したんだ!?」
カ 「モアイをワタセ。ヤマザキ。」
山 「やはり!モアイ像を独占するのが目的だったのか!?」
カ 「モアイをワタセ。ヤマザキ。今日の午後4時、市営埠頭の第4岸壁。マッテイル。」

通話が切られる。時計は午後3時を示していた。あと1時間しかない。罠かもしれないが、相手も銃撃を受けており無傷だとは考えにくい。再び戦いになれば自分が有利だろう。そして裏切り者をこのまま許すわけにもいかない。山崎は港へと急ぎ向かった。


市営埠頭に到着し、車から降りて第4岸壁へと向かう山崎。約束の時間まであと5分。しかしまだ、カメさんの姿は見えない。周囲にはスクラップの山が見えるのみで、人の気配も感じない。戦闘には都合の良い場所だと山崎は思った。


午後4時。山崎の目の前にどこからともなく姿を現す黒衣の男。その手にはカメさん愛用の赤色の刃を携えている。

カ 「モアイをワタセ。ヤマザキ。」

姿形は違えどその声は紛れもなくカメさんのものだった。だが明らかに正気ではない様子。片手を差し出してモアイ像を渡すよう、なおも詰め寄ってくるカメさん。
山崎は手にした愛銃をカメさんに向けつつも、再び撃つべきか迷いを感じ始めていた。


その一瞬の隙を突き、カメさんの左手からドス黒い怪しいオーラが放たれる。山崎の体へと纏わりついて動きを封じるオーラ。これはもはや人間技ではない。


全く動けなくなった山崎。カメさんは山崎の懐に隠していたモアイ像を容易く見破り、奪い取ることに成功する。

カ「ヨウヤクトリモドシタゾ、ワガイチゾクノタカラヲ。イソガネバ…。」



意味深な一言を残し、陽炎のように姿を消してしまったカメさん。そして動けない山崎はこのまま1時間、海風を浴び続けることに…。
カメさんがモアイ像を狙う目的は果たして何なのであろうか?

後編に続きます。

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